FXSEがどのような過程で作られたか、「予測と分析に至る道」をご案内します。
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第4章 実需による予測
上手くいっていた投機による予測が通用しなくなり、かねてより研究が続いていた実需の分析による予測の実用化研究に本腰を入れる事になりました。
投機の場合、一方通行の動きではないので予測ミスを犯しても2カ月周期で戻ってくる可能性がありますが、実需は一方通行の動きですので、予測をミスしてしまうと戻ってこない可能性があります。ですので予め高い精度で予測しておいて、次の一手を考える時間を確保できる様にしないと実需分析の実用性がありません。
そこで、実需分析は事前に(半年前には)予測値を出す事を目標にしました。
さて、実需分析に使用できる統計値には何があるでしょうか?
為替に関連しそうな実需の経済統計といえば、経済産業省が発表している貿易統計があります。
食料品や日常品、工場で生産に使用する原料の輸入や、完成品の輸出、インバウンド・アウトバウンドのモノ・サービス消費と、全ての数字が入っています。いかにもそのまま使用できそうな数字です。
ところが、です。輸出入統計の数字をそのまま為替予測に使用する事はできません。各月のドル売上やドル支払が、そのままその月に行われる訳ではない為です。
輸出企業を例に取ってみても、日本での必要額のみ円転する・海外での再投資分はドルのままにするなど金額に調整が入り、さらに毎月交換する・決算期直前にまとめて円に変える・あらかじめ為替予約してあるなど、交換時期にも調整が入ります。つまり、単純に各月の貿易額がそのままドル円に響くものではないのです。
実需統計の難しさ
従来、実需数字を元にドル円推移予測が行われていなかったのは、このあたりの難しさを解決できなかった、という要因も大きかったと思います。実需数字を単純にグラフにすると月々の揺れが凄まじく、とても為替との相関を見つけることができません。
かといって長期移動平均にしてしまうと、揺れが消え去って5~10年単位の傾向しか掴むことができなくなり、為替予測の観点では役に立たなくなってしまいます。
難しいとはいえ、テクニカル・投機分析だけで予測できない局面がある以上、実需分析による予測を避けて通る事はできません。幸いなことにAnalytics Systemsでは、投機分析で十分な成果を上げている間も着実に準備を進めておりました。
1.実務の観察
研究現場では、やはり実験や観察というものは重要です。為替研究の場でもそれは変わらないと考え、研究員は実際に貿易を行っている現場を観察する事にしました。
【経営層の意思決定を知る】
経営企画の担当者として企業勤務を行い、海外取引・円転・ドル転について、時期・金額・為替予約の決定手順や、経営判断の進め方を観察しました。
【支払・受取実務を知る】
輸出入の実務担当者としても企業勤務を行い、実際に取引・請求・支払のフローを観察しました。
⇒これにより、貿易統計の数字がドル円推移に影響する癖を見つける事が出来ました。
事業会社で観察
実需が重要になると判断した後、実際に研究員が事業会社に入社し、業務を行っています。
その時に受けた実務用の研修が、当時「トーマツ イノベーション」という名称で行われていた、監査法人デロイト・トーマツのコンサルタントが実際に教壇に立って教える研修でした。テキストもコンサルタントが作っているもので、非常に分かりやすく、即戦力の原動力になる内容でした。研修会場のある有楽町電気ビルに楽しく通ったものです。
実務を行った企業も大きく成長し、今は東証上場を果たしています。よく徹夜したなぁ・・
2.計算方法の確立
次に、貿易統計の数字を元にドル円がどう推移するのか、事業会社で見つけた癖をもとに数式を作る必要があります。
ここでは、長年コンピュータ計算と流体力学の研究を行ってきた我々の持つ技術が役に立ちました。
①流体力学研究で培った、数値の相関性を見て計算手法を構成する技術(新しい統計処理手法を構築)
②大量に試作した計算手法を次々に実行して試す技術
③出来上がった計算手法が持っていた、無限ともいえるパラメータの組み合わせに、AIを用いて組み合わせ最適値を算出する技術
⇒これらにより、統計数字からドル円推移を算出する計算手順・式を完成させることができました。
新しい統計処理法の開発
通常、予測には「相関式」・「回帰式」と呼ばれる計算式を用います。
ところが、相関式は「今までの推移と同じ傾向で進んだ場合を再現する」方法、回帰式は「物事の変化を(周期をもって繰り返す)振動であると考え、過去と同じ揺れ方をした時を再現する」方法ですので、不定周期・不定振幅を持つ一方通行の動きは、うまく予測できない(予測できていない)難点がありました。
そこでAnasytics Systemsでは、新しい統計解析の計算方法を開発する事で、相関と回帰によらない予測を行うことを可能にしました。
さて、ここまでお読み頂いて、一部の方は気づいているかもしれません。
FXSEの実需予測には、相関式・回帰式を用いておりません。そして、昨今大流行しているAI予測の様に、毎回膨大なニュースの分析を行って特徴量を計算し、ランダムフォレストで予測している訳でもありません。
では、なぜ予測ができるのでしょう。
それは・・「経済統計の中にある先行指標を探し出し、予測式を構成する」手法を用いたからです。
先行指標を探し出すと言っても全く一筋縄ではなく、
①無数にあるうちの、どの経済統計が
②何か月後に
③どのくらいの割合で
為替に影響するのか、①×②×③の数だけある(無数にある)パターンを組み合わせて、最適なものを探し出す作業が必要です。
さらに、無数の組み合わせを試してみても、算出した要素をただ掛け算・足し算するだけでは全て上手くいきませんでした。
それでも今までの研究開発経験から、この方法を行えばできると確信がありましたので、さらに試行錯誤を繰り返しました。その過程で、流体力学研究の知見が活かされた「新しい統計解析法」が発明され、有効な予測式の生成が可能になりました。
FXSE実需予測エンジンの完成
結果的に、FXSEの実需予測は、
・新しく開発した統計解析式を用い
・(無数にある経済統計のうち)選び出した複数について
・(その統計一つ一つごとに)何か月後に、どれくらいの割合で影響するのか
を計算する、固定の計算式になっています。
FXSEの実需予測の実体は「AIで算出したパラメータが入った、固定の計算式」なのです。
これでやっと、実需の統計値を元に、中長期の一方通行な影響の予測が可能になりました。ここからは、実需の予測値と投機ポジションとの相関を見て、上下どちらのリスクが高いのか、判断するステップに入ることになります。
Green-AI Technology
固定の計算式が持つパラメータ
・どの統計 ・何か月後に ・どれくらいの割合で
を算出するのに、AI(モンテカルロ法・遺伝的アルゴリズム)が用いられました。
そのためFXSEの実需予測エンジンは広義のAI予測と言えるのですが、AIを用いて統計項目の取捨選択と計算パラメータの算出を行ってしまえば固定の計算式になりますので、これ以降の予測計算にかかる消費電力は少なくて済みます。
AnalyticsSystemsが持つ優位性、消費電力の少ないAI活用「Green AI Technology」です。